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おすすめ! 算数の本


当サイト管理人は、約20年前から首都圏の某塾で中学入試の算数の指導をしています。この間、小学生相手に授業をすること以外に、塾の教材編集や市販の問題集の編集といった仕事も行ってきました。

塾には、授業用の教材・家庭での復習用の教材が完備されていますが、保護者の方からは「先生のお勧めの市販の問題集はありませんか?」という質問をよく受けます。塾の教材がその塾に通うすべての子どもにぴったりと合っているわけでもなく、できる子はもっとできるようになるための教材を、できない子はできるようになるための教材を探しているということでしょう。

先の質問を受けたとき、まず私はその子どもの成績や授業での様子を思い浮かべて、本当に新たに問題集を買う必要があるのかどうかを考えます。そして、たいていの場合は「買う必要はない。現在使っている教材をやり込むべし」と判断して、その子が何をするべきなのかを保護者の方に伝えます。ここで私の話に納得して指示に従ってもらえれば何も問題はないのですが、私の力不足のためか、必ずしも私の思うようにいかない場合もあります。

そんなときは、その子に最適と思われる問題集を一つだけ挙げることにしています。そのときの視点は、「その問題集がその子に合っているかどうか」です。仮にその問題集が世間的に評判の高いものであっても、子どものその時点での能力に合っていなければ、得られるものはそれほど多くはないからです。そして、たくさん買い与えるのは決してよいことではないので、オススメは1冊だけです。

市販されている問題集は種類が非常に多様で、中身も完成度の高いものからひどい(こんなので金を取っていいのか?というような)ものまで本当に様々です。大手の出版社から発売されているものが良いものだとは限りません。そこで、ここでは私の独断と偏見でオススメの算数の本を挙げておきます。何かの参考になれば、と思います。

算数ベストチェック

対象;偏差値30〜55程度の受験生

内容;
算数の知識ともいうべき基本パターンが分野別に網羅されています。見開きの左ページにパターンの説明、右ページに問題が載っています。問題の解説はあまり詳しくはありませんが、パターンの説明が十分にあるので不要でしょう。
ここに載っているパターンをすべて自由自在に扱うことができれば、偏差値55〜60くらいの中堅校の合格点は十分に取れると思います。
難関校の受験生なら、ここに載っている問題でつまずくことは命取りになるので、知識の漏れがないかどうかのチェックに使えるでしょう。
 
栗田哲也先生のスピードアップ算数〈発展〉

対象;偏差値60〜70程度の受験生

内容;
難関校受験生のための問題集で、はっきり言って難しいです。パターンが分野別一行問題形式で440問並びますが、これがスラスラ解ける受験生はかなりの実力の持ち主でしょう。偏差値60をコンスタントに取れる受験生以外は手を出さないほうが無難かもしれません。
見開きの左ページに問題、右ページに解くためにイメージするとよい素材が与えられています。圧巻は解説の質と量で、非常に丁寧にかつ大量に書かれています。素質のある子が自力で強引な方法で解いた後、解説に書いてあることを吸収すれば、無敵の存在になるでしょう。
 
栗田哲也先生のスピードアップ算数〈基礎〉

対象;偏差値50〜60程度の受験生

内容;
同タイトルの<発展>に対しての<基礎>となっているため、「中学受験の基礎」というよりは「難関校受験の基礎」といったイメージの問題が並びます。
偏差値50以下の子どもにとってはかなり難解な問題も多く含まれているので、「算数ベストチェック」のようなレベルの本で基礎を固めてから、この問題集に手を出すとよいでしょう。「基礎」という言葉にカンチガイすると、「基礎のはずなのにわからない→自信がなくなる」ということにもなりかねません。
ケチをつけているように見えますが、中身は<発展>と同様、すばらしいの一言です。
 
中学への算数ステップアップ演習―がんばる小学生へ!

対象;偏差値50〜60程度の受験生

内容;
算数を21の分野に分け、それぞれの分野で選び抜かれた良問がぎっしりと詰まっています。解説もかなり詳しく書かれていますが、それを読みこなすためには、受験算数の基礎事項が頭に入っていないと厳しいでしょう。「算数ベストチェック」のようなレベルの本で基礎を固めてから、この問題集に手を出すとよいでしょう。
 
 
【番外編】
強育論

対象;保護者、塾教師

内容;
驚異的な難関校合格率を誇る塾教師が書いた教育ノウハウ本です。
著者の偏見に満ちた論理展開が延々となされるため、好き嫌いが激しく分かれそうですが、書き方はともかく主張している内容については共感を覚える箇所がたくさんありました。
子どもとの関わりについては、この本の主張通りでうまくいく場合とそうでない場合がありそうです。うまくいかない場合に、著者のように切り捨てることができないところが悩ましいところです。